というか、今回みたいなタイプの違和感は今までなかった。



多分俺しか気づかないくらいの小さな違和感だけど。



大丈夫かな…。



何か悩みとかがあれば俺に言ってきたのに言わないってことは多分なにかあったわけではないだろうし…。



杏光の飲みかけのコップをもらって一口飲んで、返した。



え、なにその表情…。



一瞬だけ、本当に一瞬、ちょっと動揺したように俺の方を見た。



今まで見たことのない杏光の顔に俺もちょっと面食らってしまう。



その新しい表情に、ちょっと可愛いとも思った。



杏光のそのおかしな変化が、気になって気になって仕方ない…。



なんだか俺まで少し変になった気がした。



それから杏光の違和感が気になったまま、慌ただしく日常が過ぎ、球技大会当日。



「頑張れ~!」



現在、自分のクラスの女子バレーを応援中。



女子バレー部がクラスにいないからうちのクラスは弱くて、すぐに負けてしまった。



残念…。



他のクラスの試合でも見ようかな…。



「あれ、海琉の彼女じゃね?」



新太の声に振り向くと、俺たちのクラスが試合していたのとは反対側の体育館のコートで、杏光がバスケの試合をしてた。



「だから彼女じゃないってば…」

「悪い、間違えた」

「しっかりしてよね」



新太は俺の言葉も話半分に、杏光をガン見。



杏光に穴が空きそうな勢いだ。



「あんな動いてても美人だな」

「そう?」

「『そう?』って…わかんねえの?」



正直、小さい時から一緒にいすぎて感覚が麻痺してる。



あんまり容姿を客観視したこともない。



でも、たしかに、目は大きいし目鼻立ちがはっきりしてて、鼻筋も通ってるし、美人かも…。



気づけば、暇になったクラスの人たちのほとんどが杏光に注目してる。



杏光がシュートを入れると、一斉に拍手して。



ちょっと面白い…。



途中、俺に気づいた杏光が手を振った。