今日は晴れて入学式。

田舎めの公立高校へ進学した私(安井琉依ヤスイルイ)は
ウキウキとワクワクでいっぱいいっぱいだった。

幼なじみの鮎川龍輝アユカワリュウキも一緒のところを受験した。

「今日から高校生か~〜、琉依もとうとうJKブランドか〜襲われんなよ。」

にやっと笑ってスタスタ歩いていく。
なんなの、アイツ~。

「そんなことないし!!」

前に向かって叫んだら、手を上げる仕草が返ってきた。
龍輝とはいつもこんな感じだった。

文句を言われては言い返して喧嘩になり、
ほんっと、むっかつく。
私のことなんか嫌いなんでしょ。
だったら一緒に学校なんか行かなくていいのに。
先行かれたけどね。

1人でトボトボクラスを確認しに掲示板まで歩くと龍輝はさっそく同中の奴らとギャーギャーやり合っている。

まあそらそうだよね。
私みたいな幼なじみといるよりも楽しいか。
龍輝はムカつくけど、もてる。

ルックスも悪くないし、成績も悪くない。
なによりスポーツが出来る。
スポーツ出来るからモテるって、小学生か!って思うけど、龍輝の運動神経はそこらの上手いやつとは比べものにならない。

でも私は知ってる。
アイツは運動神経が良くなかった。
必死に頑張ってるんだ。

小学生の時に走るのが遅くて馬鹿にされて以来毎日ランニングしたりしてるのをよく見かけてたから、相当頑張ったんだろうな。

でも私にはそんなことは関係ない。
私はこれから青春を始めるんだ!
恋して、彼氏が出来て、アツアツな高校生活を楽しむ予定なのだから。

クラスは、何故か龍輝と同じだった。
ほんと、ツイてない。

「うわ、琉依いるのかよ〜。」

嫌そ~おな顔をしてこっちを睨んでくる。

「うるさいなあ。」

龍輝はそれを無視して既に馴染んでるクラスの奴らと話してる。

なんなの、ほんと。
話しかけてきたくせに。

ムスッとしてると先生が入ってきてゾロゾロと席につき始める。

「皆さんおはようございます。担任の宮川雅也です。まっさんって呼ばれてるんで皆もそう呼んでくれた方が反応しやすいです。えー、今日はクラブ見学だけだから、見たいクラブぱーっと見て明日レポート提出するように。以上、1年間よろしく。」

ささ〜っと言いたいことだけ言った先生はレポートを配って教室から出ていった。

「琉依、何のクラブいく?」

たまたま同じクラスだった同中の美紗希ミサキが聞いてきたので私はテンションが上がる。
実は、ずっと入りたいと思ってたクラブがあったんだ。

「軽音部!!!」

私はこの高校のオープンキャンパスに来たときにたまたまライブだった軽音部を覗いた。
すごい迫力と気迫に圧倒されて、感動で涙が出た。

あっちの世界に行きたい。そう思った。
その中でも私の目に入ったのはベース。
ベースの音は比較的ギターよりもドラムよりも目立たない。
だけどズレてしまっては音が合わない。
重要とされるその心に優しく響く音色に一瞬で落ちてしまった。

「へ~そうなんだ。私はチア部かなあ、なんか、かっこいいじゃん。」

キャッキャと笑いあって、

「行ってくるね!」

とバイバイをして軽音部の部室でもある視聴覚室へと足を運んだ。