「私は…田辺梨都です」

「梨都な。とりあえず風呂入ってこい。身体冷えただろ」

「いや、もう行きます。すみません、宿泊中にご迷惑おかけして」



最上階に宿泊だなんて、お金持ちに違いない。


すると、陽稀さんは口を押さえて笑いをこらえていた。



「な、何か……」

「俺は宿泊客じゃないよ。このホテルの社長」





………へ?





「社長…って言いました?」

「おう、あとここは自宅な」



頭がついていかない。



「えっと………」

「まぁいいから。風呂に入ってこい」




半ば無理矢理、浴室に押し込まれた。



なんだこの豪華な浴槽……


じゃ、ジャグジーがあるよ…。



しぶしぶ服を脱ぎ、湯船に浸かると冷えていた身体がほぐれていくのがわかった。



それと同時に涙が一粒、また一粒と零れてきた。