____この声。



振り返ると、そこに立っていたのは店で私に声をかけてきたお客さんだった。


蒼と同世代くらいで、スーツがやけに似合う。



「……なんでここに」

「ふっ……それ俺のセリフ」



はにかんだ笑顔に不覚にもキュンとしてしまう。



「………家出でもしてきたのか?」

「それは………その…」

「図星だな」



すると、突然腕を掴まれた。


「ちょっ………」

「とりあえずお客様もいるから。おいで」



見渡すと、奥のバーや中庭付近に宿泊客がちらほらいた。


言われるがままエレベーターに乗り、連れてこられたのは最上階だった。


一つしかない扉から、中に案内される。



広いリビングにある大きなソファに座らせた。



「あの……あなたは」

「中垣陽稀(ハルキ)。陽稀って呼んでくれればいい」