そっと曲がり角から覗くと、社長室の扉が開いていた。



中が見えないのでもう少し近づいてみる。




「お前こそ、年がら年中男を弄ぶところは変わってねぇな」

「そんな言い方しなくてもいいじゃない。陽稀だって嫌いじゃないくせに」





ズキッ



何故か胸が痛い。



「俺はお前みたいな奴、タイプじゃねぇ」

「昔の陽稀は可愛かったんだけどなぁ〜」



聞いていられなかった。



ボトッ




持っていたファイルを思わず落としてしまう。



「……外で音がしたけど、何かしら」



女の人の声に思わず、走り出してしまった。


カーペットが敷いてあるから足音が響かない。



急いで家の扉を開け中に入る。



玄関でズルズルと崩れ落ちた。





胸が苦しくて涙がこぼれてきたのがわかった。