虹太さんが出ていってからしばらくの沈黙。




「……梨都」



ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、陽稀さんの顔が予想以上に近くにあった。


陽稀さんが優しくほほえむ。




「……俺が守ってやるから」



気がついたら陽稀さんに抱きしめられていた。


その瞬間、溜まってた涙が一気に溢れ出す。




お兄ちゃんは、私が家出をしても政略結婚を諦めていない。


その現実が受け止めきれなかった。


「……血が繋がってないからなのかな」

「実のお兄さんじゃないのか…?」



陽稀さんに話してなかったっけ。


ソファに腰掛け、昔のことを話し出すことにした。



「実の父は私が産まれる前に亡くなりました。物心ついた時には、母は再婚していました。お兄ちゃんは義理の父の連れ子です」