とりあえず、最上階の自宅まで連れていき風呂に入れさせた。



「田辺梨都ちゃんね………」


彼女から聞いた名前を声に出して言ってみる。


あの感じは家出だろう。


店で見た彼女の顔が思い出される。


風呂から出た彼女は、家出の経緯をぽつりぽつりと話し出した。



兄のレストラン事業拡大を条件にした政略結婚。


美里の義理の妹だったか。


家に帰りたくないと言う彼女に、咄嗟に声が出ていた。



「……俺と一緒に、ここで暮らさないか?」



彼女の驚いた顔を見た瞬間、自分は何を言ってるんだと我に返る。



ただ、無意識に彼女を放っておけないと感じた。


「……あの、その」



彼女の声が明らかに裏返ってる。


……ちょっと面白いかも。