「さすがにこの雨で水没したかな」


お兄さん、心配してると思うよ。


そう言われて、少しだけ罪悪感が芽生えた。



「まぁ、事業拡大のために知らない人と結婚させられる側としてはたまったもんじゃないけどね」

「動揺しちゃって…気がついたら家出てました」




帰りたい?



そう聞かれて、少し悩んだ末 首を横に振った。



「知らない人と結婚したくない…っていうのもありますけど」


気持ちが追いつかないんです。



そう言うと、陽稀さんがそっと頭を撫でてくれた。




大好きな兄に裏切られたという気持ちが少なからず心にあった。


だからこそ、今は少し距離を置いていたい。


すると、陽稀さんの口からとんでもない言葉が出てきた。






「……俺と一緒に、ここで暮らさないか?」