「………大丈夫か？」
空いたテーブルを片付けていると、隣のテーブルで1人呑んでいたお客さんに声をかけられる。
「…何がですか？」
「なんか……思い詰めた表情してる」
田辺梨都(ﾘﾄ)、19歳。
大学には通わずに義理の兄・蒼(ｱｵ)が経営するレストランで働いている。
「大丈夫ですよ」
それだけ言い、奥へ皿を片付ける。
「梨都、どした？」
蒼が料理をさらに盛り付けながら話しかけてきた。
「んー、何でもないよー」
母親と義理の父親は、私が小学生の頃に事故で亡くなっている。
それから、15歳上のお兄ちゃんが頑張って働いて高校卒業までさせてくれた。
