しばらくして夏が来た


未来は相変わらず眼を覚ますこともない




見舞いに行ったあるとき

ある日


未来の弟が居なかった

いつもなら椅子に座っているのに

しんと静まり返っていて



まるで何もないような



空虚な時間が通り過ぎていた



「未来…」

俺は未来の側に寄り手に触れる

やはり温かくて柔らかくて
生きていた



「好きだよ。未来」



ぎゅっとその手に力を込める

好きだよ

好きだ

久しぶりに発した言葉に目頭が熱くなる


なぁ…前みたいに笑えよ


笑えよ…


ポタリと溢れた涙がジーパンを濡らし
そこだけ色が濃くなる

「好きだよ…未来」