「大丈夫ー?」
「だい、じょ…うぶ…」
華絵ちゃんが来る頃にはだいぶ吐き気もおさまっていた。
「あんた、妊娠したんでしょ。」
「……っっ!」
「それで専務には言えてないと。」
……鋭すぎる。
「華絵ちゃああああん」
とりあえず泣きついてみる。
「はいはい、よしよし。」
「どうしよう、」
「いつまでも黙っとくわけにはいかないでしょうよ」
「そうだけど…」
その時私の頭の中にあらぬ考えが浮かんだ。
「結婚…破棄してもらおうかな」
「はぁ?」
華絵ちゃんが呆れた声を出したのも無理はないかな。
「てかあんた、結婚すんの?早く言ってよ、バカなんじゃないの」
「いや、破棄しようかと」
「提出したんじゃないの?婚姻届。」
「まだ、私がハンコ押してない」
そうなのだ。
普段、必須アイテムのハンコを会社に置いてきてしまったのだ。
「どうしよう…私、優太と結婚出来ない…」
その時。
扉がガタッと空いた。
「せん、む…」
「……っっっ」
驚きながらも声を発する華絵ちゃん。
そしてなにも発せない私。
そんな私たちを見つめる優太。