横からすっ、と包丁を奪われた。



「体調悪いなら早く言え。無理すんな、って言ったばっかだろうが。」



「ごめん…」



「ん、いいから。今日は休め。」



「ありが、とう。」




悟られては…ないんだよね?

そう思いながら布団に入った。








次に目を覚ました時、優太はそばにいなかった。



「仕事、行ったのかな。」





と、タイミングよくケータイが鳴る。




《華絵ちゃん Calling》




「もしもし…」


『うわ、声くらー。』


「んー。どうしたの、」


『別にー、体調わるいあんたの声が聞きたくなって。
あ、今日家行っていい?専務遅くなるって言ってたし、ね?』


「んー、鍵開けとく…」



『ん、じゃあまたあとで。』




一方的にかけてきて一方的にきる華絵ちゃんらしい電話にクスッと笑ってしまった。



鍵、開けなきゃなぁ。




頭ではそう思っているのに体が動かない。



やっとの思いでベッドから起き上がると机の上におかゆが置いてあった。


メモ付きで。



'' 無理すんな。 ''


たったそれだけのメモが優太らしくて笑みが零れた。




やっとの思いで鍵をあけると吐き気が襲ってくる。




「ケホッケホッケホッ」