思わず善雅くんを呼んだ声が震える。


声だけじゃない。
抑えようとするのに、さっきから体の震えも止まらなかった。



「善雅、だろ?」


「えっ……」


「おまえだけが呼んでいい名前。つーか、呼べ」


もう、わたしが二度と呼ぶことはないって思ってた名前。
それをわたしが呼んだりしていいの?


こんな風に言われたら、嫌でも自惚れてしまいそうになる。


「俺の名前呼びながら、おまえは俺にずっと笑ってればいいんだよ!」


そんなことを言われたら、ますます期待してしまう。


まだ、善雅くんを好きで居てもいいのかって。


「だから泣いたりすんな! どうしたらいいかわかんねぇし……」


言われた瞬間。
わたしの目から堪えていた涙が思いっ切り溢れ出してしまった。


悲しいワケじゃない。
むしろ、善雅くんの言葉が全部嬉しくて……溢れる涙を止めることが出来なかった。


泣き出したわたしをはっとしたように見て、気まずそうに善雅くんはわたしから体を離そうとした。


「まだ行っちゃダメだよっ」


「えっ……」


とっさに善雅くんの服を引っ張って、善雅くんの体がはなれてしまうのを引き留めた。



まだ涙が滲んだ視界で善雅くんを見上げて、伝えたい気持ちを頭に浮かべていく。


「わたし、まだ言ってない」


善雅くんがわたしに言ってくれた言葉。


甘い言葉なんかじゃなかったけど、一生懸命に気持ちを伝えようとしてくれたことが嬉しかった。


だから、わたしもその想いに応えたい。