放課後。


「ほら」


「なんだよ? ……あっ!」


一緒に帰ってた紘也に、何の前触れもなく携帯を差し出した。


そこに映るのは裏門に手を掛けた日菜琉。


彼女を指名した張本人は、見覚えのある顔に不思議そうに首を傾げてる。



「どういうこと?」


「付き合うことになった」


「はぁ?」


ますます不思議そうに俺を見る紘也にニヤリと笑い、俺は五限目の裏門での出来事をかいつまんで説明した。



「なんかズルくね? それ」


「いいんだよ。お互い了承してんだから」


ことの成り行きを聞いた絋也はあからさまに不満そうな表情を浮かべてる。


ちゃんとした答えなんか聞いてないけど、サボリをバラされたくない日菜琉に拒否権なんかないだろ。


だから、これはお互いの利害が一致した正当な取り引きだ。
断じてズルではないのだ……多分。


「おまえさ、その子には手出すなよ」


「なんで? 彼女だからいいじゃん」


「はぁ? 好きでもないくせに……」


確かに日菜琉に恋愛感情なんて皆無だけど。

そんなのは俺にとってはいつもと変わらないことだ。



「彼女どう見ても初めてだろ。それをお前の性欲の処理なんかに使われたら可哀想だからな」


言われてみればそうだ。
こんな俺と絋也の賭けで彼女の初めてを貰うのも気が引ける話だ。


それに俺、初めての奴なんか相手にしたことないし。



「わかったよ。手は出さない」


まぁ、女には不自由してないからいいけど。
いつも通りテキトーにオネエサマを相手してれば事欠かない。


「言っとくけど一ヶ月の間はレベル上げ禁止な」


「なんでっ!?」


「なんでって……当たり前だろっ! 特定の彼女いるのにそんなことしてみろ。浮気してるって彼女にチクるから」