善雅くんと別れて一週間が経った。
本当なら今頃がお別れの時だったはずだ。
「別れて正解じゃない。あんなヤツ」
放課後。
久しぶりに芹華ちゃんと寄り道をして、駅前のお店でお茶をする。
なんでも聞いてくれる芹華ちゃんに甘えて、ついつい善雅くんとのことを全部話してしまう。
善雅くんについて話せば話すほど、芹華ちゃんの中での善雅くんの印象は悪くなるみたいだけど……。
それでも芹華ちゃんはいつも最後までちゃんとわたしの話を聞いてくれた。
「あんな奴どこがいいの? 顔?」
「ち、違うよ! ……確かに格好いいけど……そんなんじゃなくて」
芹華ちゃんの質問にわたしは改めて善雅くんへの気持ちを思い出す。
「最初は、裏門で助けてくれた恩返しがしたいだけだった」
「恩返しって……アンタ鶴? 機織りでもする気?」
「もー茶化さないでよー」
「ごめんごめん。それで?」
カラカラと笑う芹華ちゃんに口を尖らせたけど。
すぐさま真剣な表情に戻って、わたしの話に耳を傾けてくれる。
最初から善雅くんを好きだったワケじゃない。
どちらかと言えば、今まで接したことのない苦手なタイプだったと思う。
「無愛想だし俺様だし……。でも、とにかくありがとうって伝えたかったの」
一つ一つ言葉を紡いでいくわたしに、芹華ちゃんが黙って相槌を打ってくれる。
それが、わたしは間違ってないって肯定してくれてるみたいで安心する。
「とにかく有宮くんに喜んで欲しくて……お弁当作って、プレゼント作って」
わたしが出来るだけのことは精一杯がんばったつもり。
でも、全然ダメだった。
たったの一度だって善雅くんが、わたしに笑ってくれることは無かった。