「芳川とヨリ戻すってことは……芳川を見返すチャンスじゃん。これでやっとおまえも、レベル上げ生活から卒業出来るな」


「…………」


俺のレベル上げを辞めさせたかった紘也は、リベンジを果たして不毛なレベル上げ生活から卒業出来ることを喜んでるみたいだ。



紘也の言うとおりだ。


静葉を見返すチャンスが来たんだから、嬉しいはずなのに……。


素直に頷けない。


そんな俺の様子を見て、


「……嬉しくないのか?」


「……なんで?」


「浮かない顔してるから。今のおまえ」


わざわざこうして言葉にしてくるのは、俺の心境を少なからず見透かしてるからなんだろう……。


言い知れぬモヤモヤがずっと続いている俺を、紘也がじっと見据える。


「水原さんのこと、傷付けたって後悔してんの?」


モヤモヤの核心に触れるように、直球でこんな質問をしてきた。


モヤモヤの正体は本当に後悔なんだろうか……。


「わかんないけど……悪いことしたなって思ってる」


「まぁ、否定はしないけど。善雅がそれを自覚するなんて思わなかったよ。正直」


自分の軽率な行動が日菜琉を振り回し続けた。


日菜琉の気持ちなんか考えもしなかった一ヶ月前の俺を皮肉る紘也に、返す言葉なんてもちろん見つからなかった。


「寒空の中で待ちぼうけ食らわしてる時はどうしようかと思ったけど……最近のおまえはいい感じだったもんな」


それは多分、日菜琉が俺の為に色々なことを考えてくれてることに気付いて、俺もそれに応えたいって自然と思えたから。


結局、日菜琉の目の前で静葉を選んで、切り捨てるっていう……最大にひどいことを最後にしてしまった。