「ごめん。いきなり」


門を出てしばらく歩いたところで、城崎くんは立ち止まって掴んでいたわたしの手を離した。


わたしを振り返った城崎くんの顔は、何故か切なげに微笑んでいる。



「あの……」


「さっきのヤツは善雅の元カノなんだ……って、言わなくてもわかってるか」


こう言いながら自嘲気味に笑う城崎くんが痛々しくて。


本当に言いたいのはそんなことじゃないっていうのがわかってしまう。



「善雅と芳川はちょうど一年前に別れたんだ」


「……どうして?」



誰が見ても美男美女であんなにお似合いなのに。


わたしの問いかけに言い淀んだ城崎くんが、ふぅっと一息置き、


「……善雅が童貞で芳川が処女じゃなかったから」


「…………」



思い切ったように言われた言葉に、思わずわたしは返す言葉を失ってしまった。


まさかこんなことを言われるなんて思ってもみなかった。



「芳川はね、初めてだった善雅の失敗が気に入らなかったんだよ」


「……そうなんだ」


城崎くんの説明にわたしはこう言って頷くしか出来なかった。


だって、わたしには未知の世界だから……想像すら出来ない。


「バリバリの運動部で地味でパッとしなかった善雅は、芳川に釣り合う為に必死に自分を変えたってのに……ホラ」


そう言って城崎くんが制服のポケットからケイタイを取り出して見せてくれる。


差し出されたケイタイ受け取り、わたしはそこに映された光景に目を落とした。


お揃いのユニフォーム姿で笑う数人の男の子たち。


「あ……」



胸元の名前の刺繍から善雅くんを見つけたわたしは、思わず目を見開いた。