「そっか。補習なんだ」


城崎くんの言葉を聞いてとりあえず、先に帰られたんじゃないことに思わず安心してしまう。



黙って先に帰っちゃったんじゃないかって、ちょっとでも疑って申し訳なくなってしまった。



「先に帰る? 善雅には俺から連絡しとくよ」


「……ううん。もうちょっと待ってみる」



取り出した携帯をしまいながら城崎くんは、わたしをチラリと一瞥する。


そして次の瞬間、困ったように笑って、


「ごめんな。今度からはちゃんと連絡するように言っとくから」



優しい声でわたしにこう言ってくれた。


なんで城崎くんが謝るんだろう……。

城崎くんの困った笑顔がわたしを不思議な気持ちにさせる。



「善雅なんかほっといて適当に帰りなよ?」


「うん。ありがとう」



こう言って帰っていく城崎くんにお礼を言って、わたしは彼の背中を見送った。





「……三十分、か」


城崎くんと別れてから十数分。


やっぱり有宮くんからの連絡はないままだった。



必要以外はメールするなって言われたけど、メールを入れて帰ろうかな。
さすがに寒くなってきて、指先がかじかんできた。


有宮くんにメールを送ろうと、カバンから携帯を取り出そうとしたときだった。


「あっ、有宮くん」


いつの間にかわたしの目の前に、息を切らした有宮くんが駆け寄ってきていた。