「いらない……? 出来ないの間違いだろ」
こう言って紘也はバカにするようにわざとらしく鼻で笑ってみせる。
オイオイ……やけにつっかかってくるなぁ。
いつも冷静な絋也の珍しい悪態に、俺も思わず笑って受け流せなかった。
「どういう意味?」
「おまえは、同年代の女の子と向き合えないんだろ? だから普通の恋愛が出来ない」
「何が言いたいんだよ」
「おまえは女の子を普通の恋愛では満足させられない」
うわっ。ハッキリ言っちゃったよコイツ……。
紘也の言い方だと俺は、体のみでしか女の子を満足させられないみたいに聞こえる。
どうせ最終的には体を満足させられるかってのが重要になってくるに決まってる。
だから、年上のオネエサマをいつも満足させてる俺としては、その辺はバッチリ押さえてるつもり。
「んなわけないだろっ。年上相手にしてんだ。タメなんかチョロいだろ」
「へぇ……。じゃあ……」
俺の言葉を聞いた瞬間、紘也がニヤリと妖しく笑った。
ヤバい……もしかして、コイツはなんか企んでる……?
慌てて取り消そうとしたが、それを待つことなく紘也は二の句を継いでいく。
「あんな感じの娘でも、満足な恋愛提供出来る?」
そうして紘也が指さしたのは、教室の前の廊下。
昼休みってことで、行き交う人たちの中にいた一際背の低い女の子が目に飛び込んできた。
彼女が紘也の言うあんな感じの娘。
化粧っ気のない童顔に肩まで下ろされた黒いストレートヘア。
見るからに大人しくて真面目そうな女子だ。