『安くて手軽!バリエーション豊富なお弁当のおかずレシピ集』



本屋さんの料理本コーナーでパッと目に飛び込んできたのがこの雑誌だった。


パラパラと立ち読みした感じでも、料理の行程は分かりやすくて簡単そうで。


今のわたしにはピッタリのちょうど良い本が見つかった。


早速帰ったら明日のおかずを決めよ。
有宮くんは喜んでくれるかな?


そう考えるだけで、わたしの胸は充実した気持ちで一杯になる。


買ったばかりの本をカバンにしまいながら、本屋さんを出たわたしの目に不意に飛び込んできた光景。


見覚えのある制服の男の子たちの中に、知らない制服を着た女の子たちが混ざってカラオケの前で集まっている。


……合コンかな?


話には聞くけど、実際わたしには縁のない話だ。



なんて思いながら足を踏み出そうとした視界の隅っこに飛び込んできた顔。



うちの高校の制服を着た男の子たちの中で、一際目立ってる背の高い男の子。


間違いなくそれは有宮くんだった。


本屋さんの前で立ち尽くしていたわたしと目があった有宮くんは、一瞬だけ目を見開いてすぐさまそっぽを向いてしまう。



そうだよね。
所詮わたしは一ヶ月限定の彼女だもん。


待ち合わせ場所が学校の校門から少し離れた死角になってるのも、お弁当を靴箱に入れるのも……有宮くんにとってわたしは本気の彼女じゃないって、何よりの証拠だ。



悲しいけどこればっかりはどうにもならない。


だったらせめて約束の一ヶ月の間。
彼女にして恥ずかしくなかったって思われる彼女になりたい……。



そう思ったわたしは悲しいって感情に蓋をして、見て見ぬ振りをしながらこの場を去ることしか出来なかったのだった。