「思った通りイイオトコだね。城崎くんって」


城崎くんにまだ告げるつもりのなかった気持ちが次々と溢れ出していく。


急に褒められたら城崎くんの方は、なんのことかわからないと言わんばかりの表情を浮かべる。


そして、


「相沢さん……何が言いたいの?」


訝しそうにわたしにこう聞いてきて、思わず黙り込んでしまう。


わたしにいきなり気持ちを伝えられても、城崎くんを困らせてしまうだけかもしれない。


それでも、


「好き」


「……へっ?」


こんな城崎くんを好きだって思ってる人間が居るんだって、彼に伝えたかった。


例え報われない恋だったとしても、アナタの優しさに惹かれた人間が居たってことを。


そんなわたしの一世一代の告白に、城崎くんが呆然としたまま十数秒。


「だから、好きだって言ってるの」



じれったくなって思わず口を尖らせてしまった。


上辺では平気なふりをしてるけど、わたしだって恥ずかしかったんだから。


「誰を?」


「城崎くんを」


「……誰が?」


「わたしが」



まるで状況が掴めず、ますます混乱してる城崎くんに笑いかけてみる。


まぁ、そりゃあビックリするに決まってる。


わたしたちが初めて顔を合わせて、言葉を交わしたのはほんの数分前なんだから。



「別に突発的に言ったわけじゃないよ? なんていうか日菜の話聞いて、日菜のことを助けてくれたいい人だなって思ってたから」


慌ててフォローをいれてみるけど、城崎くんの表情はさっきから全然変わらなくて。


わたし一人でいきなり告白して空回ってるんじゃないかって思ったら、なんだか急激に恥ずかしくなっていった。


「それで実際に喋ったらやっぱりイイオトコだった。だから好きって言ったの」


それでも、言いたいことは全て城崎くんに伝えてしまおう。


もしかしたら、わたしの言葉が少しでも彼の傷心した心を軽くしてくれるかもしれないから。


「まぁ、少なくとも一人。君に想いを寄せてる人間がいるって思っといて」



「ちょっと待って」


元々答えをもらうつもりはない。


だから一方的に思いの丈をぶつけて立ち去ろうとしたわたしを、城崎くんが咄嗟に呼び止めた。