俺の答えを聞いた相沢さんは、何故か満足そうに満面の笑みを浮かべながら俺を見ている。


そして、


「思った通りイイオトコだね。城崎くんって」


何故か手放しで褒められてポカンとしてしまった。


何これ……?
散々人の傷口をえぐった挙げ句、今度は褒めるって……どういうこと?


つーか、この人何しに来たんだ?



「相沢さん……何が言いたいの?」


相沢さんの意図がわからなくて、じれったくなった俺は単刀直入に彼女に尋ねてみる。


それを聞いた相沢さんはしばらく、うーんと考え込んだ後、


「好き」


「……へっ?」


ものすごく真剣な顔できっぱりとこの二文字を俺に告げてきて、思わず呆気にとられた顔と間の抜けた声が出てしまった。



お互いにそのままの顔で見つめ合うこと十数秒。



「だから、好きだって言ってるの」



少し拗ねたような口調で、相沢さんが唇を尖らせた。


「誰を?」


「城崎くんを」


「……誰が?」


「わたしが」



こう言ってにっといたずらっ子みたいな顔で笑いかけられて、ますます頭の中が混乱していく。


いきなり好きって……俺たちが初めて顔を合わせて、言葉を交わしたのはほんの数分前なのに。


言われてることの意味がうまく理解出来ない。


呆然と相沢さんの顔を見つめ続ける俺の心境を察したのか。


「別に突発的に言ったわけじゃないよ? なんていうか日菜の話聞いて、日菜のことを助けてくれたいい人だなって思ってたから」


さっきまでの余裕綽々だった表情が嘘のように、早い口調で慌てて説明していく相沢さんの頬が今更赤くなっている。


「それで実際に喋ったらやっぱりイイオトコだった。だから好きって言ったの」


今更照れたように赤くなった頬が、気の強そうな第一印象とギャップがあってなんか……可愛い。


可愛いって……。
好きなんて言われて舞い上がってるのか……俺は。



「まぁ、少なくとも一人。君に想いを寄せてる人間がいるって思っといて」



「ちょっと待って」


一方的に言うだけ言って立ち去ろうとする相沢さんを咄嗟に呼び止めた。