「……そう思わないとやってらんない」


何故か苦々しい表情を浮かべながら、毒づいて吐き捨てる。


表情もどこか投げやりにすら見える。


「なんで?」


「だって、わたし有宮くんのこと……」



言いよどむ彼女を見つめながら咄嗟に想ったのは、もしかして俺と同じパターンなのかってことだった。


でも、


「気に入らないから。なんであんなヤツが日菜琉を……」



忌々しそうな顔で善雅の話をする相沢さんを見て、すぐに取り越し苦労だったって気付いた。



どうやら俺と真逆のパターンで、善雅が気に入らないらしい。


そりゃそうだよな。

大切な友だちを賭けの対象にした挙げ句、傷付けまくったんだから。



「どうせなら城崎くんとくっついて欲しかったなぁ」



相沢さんから無意識で発せられた一言が傷心中の心にガンガンと響いてくる。



「……水原さんは誰とでも幸せになれる女の子だと思うけど、善雅は水原さんじゃないと多分幸せになれない」


「逆に言えば、日菜琉は有宮くんじゃなくても良いってことでしょ? ……例えば城崎くんとか」



ああ言えばこう言うで切り返される相沢さんの言葉に落ち込んでしまいそうだ……。


さっきからこの人は、俺の傷口に惜しみなく塩を塗りたくってくる。



もしかして……俺の水原さんへの気持ちに気付いてるとか?


それで善雅の代わりに嫌がらせされてるとか?


だったら、連帯責任で甘んじて受け入れるしかないんだろうか……。


「……なんで有宮くんと別れて傷心で弱ってる日菜琉に近づかなかったの?」



それも考えた……正直なところ。


悲しそうな水原さんの横顔を見たら、手を差し伸べたくて仕方なかった。


でも、それをしなかったのは、


「水原さんを好きである以前に俺、善雅の親友だから」



いわゆる、恋より友情をとったってヤツだ。



それに、遅かれ早かれ善雅が芳川と別れるのは目に見えていた。


だって、あんなに尽くしてくれた水原さんが居たんだ。

ワガママで高飛車な芳川に嫌気がさして当然だ。


それで水原さんへの気持ちに気付いて、二人が両想いになれば全部まるく収まる。


それが一番だ。