~篠田said~
お昼休憩を取り終わった直後、
電話が掛かって来た。
画面の表示を見ると、
鳳山総合病院の春山先生だった。
「はい、もしもし篠田です。」
『あっ鳳山総合病院の春山です。
……お忙しい所すみません。
実は確認したい事がありましてーー』
そう言って切り出して来たのは
愛夏ちゃんのお父さんの事だった。
「あの……愛夏ちゃんのお父さん、
実は愛夏ちゃんが2歳の時に亡くなっているんです。」
『……えっ?』
電話越しから聞こえるのは驚きの余り言葉に詰まる春山先生の声。
やっと出た言葉は「詳しく伺っても宜しいですか?」という戸惑ったような浮ついた声だった。
「死因は焼死で、火元はキッチンの近くだということで自己の不注意による火災事故ということで終わりました。」
「その時、愛夏ちゃんも同じ家に居たらしいのですが、お父さんが2階のベランダから下に居る救助隊員に愛夏ちゃんをキャッチしてもらって助け出したという訳です。」
『それでお父さんは…………。』
全てを説明し終わると、
事の成り行きから春山先生は
結末を察し言葉をなくした。
しかし、少しの間を置いて口を開いた
春山先生から告げられた事実に
私は自分の耳を疑った。

