仕方なく
雨が降っている
それを僕は
何も考えずに眺めている
犬が鳴いた
そこで僕は立ち上がり、のそのそとドッグフードの袋を開ける
今日は散歩したくない
そこで、大きくくしゃみをする
何もできないような
普通ではない日常が
軽い羽毛のように、それがかえって僕を押しつける
犬は尻尾も振らなかった
僕は喉が渇いてきた
何か、とんでもなく大きなものが、自分の中から羽ばたいて出ていく
どうしてなのか、泥沼の道が目の前に開けていて、そこへ落ち着いていく
どうしてもそこから抜け出たくなくて、僕は溺れてしまう
きちんと前を向いていれば助かっただろうに
あいにく僕は目を閉じていた
それから幾日かして、地球は滅んだ
そのまま、緩やかに傾斜は直線になり、直線は繋がり、どこまでもまっすぐの道が続いている
どういうわけなのだろう
木漏れ日が、その犬の頭を照らしつけ、そいつは頭をちょっと動かした
眠くて眠くてたまらない
生姜はすっかり干からびていて、冷蔵庫の隅に置かれてはあるが
どうしてなのだろう
海にはクジラもイルカも
なんだっているのだろうけれど
奇妙なことに、僕にはどの記憶も抜け殻のようだった
古い紙に目を落とすと
そこは何も書かれていなかった
それだのに、紙自体は黄ばんでいて、僕を焦らせる
魚は釣り上げられたばかりで、エラで必死にそれが生きていることを証明する
泣いた
叫んだ
そうだとしても、それがなんになろう
夢の中で、九官鳥がみんなに挨拶している
みんなは九官鳥に会いたくて、行列をなしている
僕もそこへ当然並んだのだが、その九官鳥は何を思ったか、
僕の番になるちょっと前に飛び立ってしまった
あいつはあいつで気ままなのだな
りんごの汁はゆっくりと垂れていく
そこにアリが群がり、溺れて死んだ
綺麗に洗えばなんともなかっただろうに、放置しておくからこんなことになる
犬は寝そべってその脂ぎった腹を見せる
それだからいけない
それだからいけないのだ
僕は忠告しようと口を開けたが、そこから漏れるのは不運ばかりだ
けつまずいて転べばいいさ
仲良く落ちて抱き合えばいい
その通りだと思う
それからキノコを摘んだ
キノコには青いカビがたくさん生えていて、さながら生き物のようだった
僕は頷いて、それをかじる
今日はきっと、何もしない
車はそのアームを左右に振って雨をガラスへなすりつける