夕暮れ時。

真っ赤に染まった道を、リュートは1人歩く。

降って湧いたような将軍職への推挙の話。

古奈美と許婚になった時に漠然と、そんな事もあるのかな、なんて考えていた。

自分が1つの国を、惑星を守る。

ミルトゥワで勇者になったとしても、天神地区で英雄になったとしても、ヒノモトで将軍になったとしても。

きっとやる事は変わらないのだろう。

自分の力で、大切な人達や場所を守るのだ。

そして、その為には力がいる。

「……」

立ち止まり、リュートは振り向いた。

「どうよ、お前ら。もう一回力貸してくんねぇか?」

…リュートの後ろには、幾つもの小さな光が浮かんでいた。

《何でぇ、やっぱ俺達がいねぇと駄目だなあ》

火蜥蜴に乗った少年が。

《リュートは私達の力が必要なの?》

水色のドレスを纏った少女が。

《怪我ばかりする貴方じゃ、それもやむを得ないかもね》

葉っぱの冠を被った少女が。

《僕らがいないと、地に足がつかないかい?》

緑色の帽子を被った少年が。

《リュートさんが言うなら、私は別に手を貸しても…》

蔦を体に巻きつけた少女が。

《助けてほしいんなら、別に手伝ってあげなくもないけど?》

ツンツンした少女が。

《……》

穏やかな笑みを浮かべ、黒い靄に包まれた中性的な人物が。

《リュートにそんな顔して頼まれたら、断れないなあ》

光の玉に乗って浮遊する少女が。

誰1人として、リュートの差し伸べた手を振り払う者はいない。

「……」

リュートもまた、笑みを浮かべた。