「そうかそうか、メインキャストになるかもしれないと言った傍から、ネタに困って早速奴らを使う事にしたか理事長!不甲斐ない事だな!」

天神シリーズにおける神にも等しい理事長に対して不敬な台詞を吐きながら、ヴラド学園長が階段を下りる。

昔から読者諸兄に慣れ親しまれた天神学園。

しかしこの学園には、まだ知られざる部屋や特別教室が存在する。

天神学園図書室の、埃をかぶった床下から続く、石造りの螺旋階段。

そこを下り切った先に、その教室はあった。

天神学園魔術クラス。

ここを使うのは、実に数百年ぶりとの事だ。

まだ魔術が当然の如く生活や社会に根付いていた時代に、欧州や中東からやって来た魔術師、呪術師に学問として魔術を教えていた頃に使っていた教室。

数多くの魔道書(グリモワール)が、これまた数多くの書棚にびっしりと収められている。

存在しない軍隊の幻覚を敵に見せる呪文や悍ましいモンスター召喚方法が書かれた『ネクロマンサーズ・マニュアル(ミュンヘン降霊術手引書)』。

人間の排便や血液や精液を混ぜた強大な力を与える調合薬など数百ページにものぼる最大級の情報量を誇る魔道書『ピカトリクス』。

3冊を超える写本の存在を禁ずる、また所有者は生涯女性と結婚してはならない、という言葉が書いてある『ホノリウスの誓いの書』。

69体の悪魔とその召喚方法が全て掲載されている魔道書『悪魔の偽王国』。

18か月もの儀式が必要な魔術師の守護天使を解き放つ方法が書かれた『術師アブラメリンの聖なる魔術の書』など。

ここに保管される魔道書は原典であり、高純度の知識が内包されており毒が非常に強い。

並みの魔術師でも一目見ただけで激しい頭痛や精神汚染によって倒れ伏せるなど読み解く事は難しく、原典の毒に耐えられる技量や特性を持つ人間は稀である。