深夜。

ダンドリッジは小高い丘の上で、月を眺める。

傷はまだ癒えていないし、魔力の回復具合も2割程度だ。

傷の再生に回せば、また魔力は枯渇してしまう。

故に傷も魔力も、自然回復に任せるしかない。

「ダン」

ダンドリッジを探して、ベルがやって来た。

「何してるの、寝てなきゃ」

「夜寝る吸血鬼があるか」

何を馬鹿な事をとばかりに、ダンドリッジは笑う。

「でも…魔力も傷も癒えないわよ?こんな時くらい、しっかり休養を取らないと」

「すぐに戦いが起きるならともかく、今は平穏だ。必要ない」

「だって…」

ベルは俯く。

「ダン、私の血をあれから吸わないんだもの…それじゃあいつまで経っても回復しないよ」

「ならば訊くが」

振り向き、スタスタとベルに歩み寄るダンドリッジ。

ベルはあれよあれよという間に追い詰められ、背後の木の幹に壁ドンされる。

「俺の現在の魔力量は零(エンプティ)に近い。それを血で補うとなると、相当量が必要となる。喘いでも、悶えても、やめてやれないほどの血がな…我慢できるか?マスター」

何をニヤニヤ笑ってるの、このドS従者め…。

ベルは頬を赤らめ、目を逸らした。

「す、好きにすればいいんじゃない?マスターは従者への魔力供給が義務だし」

「…いい度胸だ。泣いて後悔するがいい」

ダンドリッジは、ゆっくりとベルをその場に横たえた。