精霊術による身体強化はしていない。

にもかかわらず、吸血鬼が一瞬見失うほどの高速で詰めてくるティグル!

距離を詰められる事を、ダンドリッジはあろう事か見逃した。

間合いを侵略され、ティグルのレーヴァテインが届く距離。

袈裟斬り、逆袈裟、刺突と繰り出される剣技を、上体の動きだけで回避する。

流石は上位の人外、見切りも回避速度も超一流だ。

だが事ここに及んで尚、ダンドリッジは撃たない。

両手に二挺拳銃は握っている。

にもかかわらず、トリガーにかけた指を引かない。

ダラリと両腕を下げたまま。

「でぇい!」

ティグルが下段から振り上げる。

斬り上げか。

そう見せかけておいて。

「がっ!」

ティグルは刃を振る事なく、剣の柄尻でダンドリッジの顎をかち上げた!

明滅する眼前。

一瞬だが、動きが止まる。

「もらった!」

本命の振り下ろしを放とうとするティグル!

ダンドリッジは。

「ちっ!」

パニッシュメントの銃口をティグルの腹に突きつけ、発砲する!