アマリリス達の乗っている飛行船に回収され、リュートは治療を受ける。

勿論古奈美も一緒だ。

「古奈美、リュー君よろしくね」

笑顔で見送るティグル。

「あ、あの、ティグル様、あのっ…」

アマリリスが、ボロボロのティグルに声をかける。

閉じたままの右目、二目と見れない背中の火傷。

こんな無惨な姿にしてしまったのは、紛れもなく自分。

調子に乗って、この武道大会を開く切っ掛けを作ってしまった自分だ。

「申し訳ございませんティグル様、私、私は、いい気になって…ティグル様のお役に立っていると調子に乗って、こんな…」

「いやあ、楽しいね、最高だよアマリリス」

ティグルの言葉は、嫌味でも、当てつけでもなかった。

「ほら、僕って天才だからさあ、なかなか苦戦する事ってないんだよ。でも勇者を名乗るなら、苦戦の果てに勝利っていうのも、経験しなきゃでしょ?こんな経験、アマリリスがお膳立てしてくれなきゃ出来なかったかも」

まだ試合途中だ。

怪我人の収容が終わったのなら、長く中断は出来ない。

上昇していく飛行船。

その舷窓から見つめ続けるアマリリスに向かって。

「こ…大会が終…ったら、僕達付…合…うか」

「えっ?」

唐突な台詞をティグルが言ったような気がしたが、飛行船の動力音のせいで、アマリリスにははっきりと聞こえなかった。