こんな血塗れ傷だらけの兄は、初めて見る。

「どうしたティグ、その右目」

リュートが驚いたように言う。

「ああ、潰れちゃいないよ。瞼が切られて開かないだけ。いやあ、あの黒い鎧の騎士は強かったなあ…」

そう言って、ゆっくりと閉じた右目に触れるティグル。

「さて…それじゃあやろうか」

「……」

兄が言うのは分かっていた。

この程度の傷で、ティグルが再戦を延期するとは思えない。

どんなに体調が悪くとも、彼はレーヴァテインを握るだろう。

「三度の飯よりリュー君が好きだからね」

「…アマリリスに言ってやれよ、喜ぶぞ」

「アマリリスに?何で?」

兄弟揃って、女性の心の機微には疎いようだ。

「まぁいいや」

構えるリュート。

「えー?」

ティグルが少し驚く。

「ヒノモトのとはいえ、神様の前だよ?場所変えない?」

「神様にだって…」

リュートは突進する!

「俺達の戦いは止められねぇよ!」