這い蹲るティグル。

砂に指を食い込ませ、何とか立ち上がろうとする。

「止した方がいいわね」

紺色の髪をシニヨンに纏めた人民服の娘は、口元を扇子で隠しながら妖艶に微笑んだ。

正確には扇子ではない。

鉄扇。

文字通り、鉄で作られた扇だ。

これを時に広げ、時に畳んで、変幻自在の攻撃を行う。

打つ、斬る、突く、防ぐ、まさに変幻自在だ。

娘はこの鉄扇で、ティグルのダガーをいいように受け流し、カウンターの攻撃で何度もダウンさせていた。

「いい男が台無しよ。その辺で諦めて棄権するのをお勧めするわ」

「…困ったなあ…」

ダガーを鞘に納め、ティグルは立ち上がる。

「リュー君と再戦の約束してるんだよね…棄権とか、出来ないんだ」

「あらそう、至極残念」

パシンと鉄扇を閉じ、娘は小さく溜息をついた。

「じゃあ負けてもらうしかないわね…美形の青年が敗北に涙を堪える様も、絵になってなかなかいいけれど」

片足を上げ、まるで鶴のように、娘は構えた。

「私は容赦なく負かすわよ?」