彼は父に憧れた。

彼は祖父に憧れた。

かの地、父や祖父も通った天神学園。

その地を蹂躙しようとした巨凶に敢然と挑み、仲間達と共に学園を守った。

守る為の剣を体現した祖父、シオン・グリフィノーには強い羨望を抱く。

しかしその一方で、母方の一族にも憧れるのだ。

愚直にひたむきに、己の拳ひとつで強く、強くありたいと願い続け、体現してきた丹下の一族。

…勇者なんて柄ではないと、彼は思う。

勇者は、身内の誰かが継げばいいと思う。

だがこれだけは。

拳ひとつでのし上がるという野心だけは。

誰にも譲れない、譲らない。

例えグリフィノーにあるまじきと罵られ、誹りを受けようとも。