「貧血だってさ」

目が覚めると、畳敷きの部屋に敷いた布団に寝かされていた。

「北斎先生から聞いたよ。あんた、異国の血を吸う妖怪なんだって?それが貧血起こして倒れるなんて、よっぽど血が足りなかったんだねえ、にゃは~」

傍らには、女の子座りのお龍。

どうやら介抱していたらしい。

「どう?少しは楽になった?」

「……」

寝たまま、吸血鬼は視線を走らせる。

「コート…俺のコートは何処だ」

「ああ、そこに畳んで置いてあるよ。貧血の時は、楽な格好して安静にしとかないとね」

「……」

インバネスコートをじっと見る吸血鬼。

と。

「探し物はこれでござるか?」

部屋に入ってきた北斎が、両手に持った二挺拳銃を見せた。

大きな銃だ。

小柄な北斎は、しっかりと力を込めて持っていないと持ち上げられない。

この時代、この国にはまだ存在しない黒鉄の銃と白銀の銃。

「特注でござるか?このような拳銃、見た事もござらん」

「返せ」

上体を起こした吸血鬼は、またあの澱んだ眼を見せる。