ところで。

「古奈美よぉ…」

古奈美の隣で、リュートが困った顔をする。

「放せよぉ…」

彼の手は、古奈美に繋がれたままだった。

今に始まった話ではない。

東郷を倒し、抱擁されて押し倒された瞬間から、傷の手当、休息中に至るまで、古奈美は片時もリュートの手を放そうとはしなかった。

このままでは用を足す時や風呂に入る時までついてきそうな勢いだ。

「辛かろう、苦しかろう、祖父殿の呪いは」

嬉々として引き笑いするダンドリッジ。

もう一度、リュートが古奈美の顔を見ると。

「リュート君は約束を守らずにヒノモトに来ました…私は怒っているんです」

一応確かに、古奈美は怒っているらしき表情は見せた。