「この一件に一切の金銭は動いていないわ。それに先方から警護を要求された訳じゃない。これはグリフィノー家からの善意の仕事なのよ」

もう一度紅茶に口を付けるリプニー。

「先方は、私やシオン君の古くからの友人…いえ、恩師だから」

「ふぅん」

茶菓子を手で摘まみ、宙に放り上げる。

放物線を描き、落下した茶菓子は、見事リュートの口の中に収まった。

それをモグモグとやりながら。

「俺にその役目を頼む理由は?」

リュートは問い掛ける。

グリフィノー家には剣術や精霊術に長けた者も数多い。

リュートの兄妹達も、正統派勇者だったフェイレイやリィシン、シオンやティーダのような戦闘スタイルの者もいる。

その中で、敢えてリュートを選んだ理由は何なのか。