『大久保 理俊が、勅使河原 古奈美を連れてきた』

その一言だけで、佐津間への道程は嘘のように順風満帆だった。

多くの警察官が警護につき、九集全土に散らばっている東郷一派の兵達も、一切手出しをしてこなかった。

政府軍も東郷一派も、まだ睨み合いの段階。

東郷が指示しない限り、士族達は動く事はないらしい。

佐津間・籠島城(かごしまじょう)。

「お待ち申しておりました」

城門の前に、醜悪な顔の巨漢が立っていた。

「岡田 伊蔵…」

沖田が大典太を握り、ダンドリッジがインバネスコートに手を差し込む。