完全に主導権を握られたまま、リュートが古奈美に連れて来られたのは、ある教室だった。

木製の看板が掛けられている。

毛筆で『隠密喫茶・忍ぶ忍ばず』と書かれていた。

「ここって、生徒会長の弟さんの佐助君のお店なんですって」

リュートにパンフレットを見せながら古奈美が言う。

お世辞にも繁盛しているとは言い難い。

というか、客はリュートと古奈美だけのようだ。

何故だろう?

店構えとしては、和風で落ち着いていて、悪くはないのだが。

「取り敢えず、入ってみっか」

「そうですね、何か飲みたいですし」

リュートと古奈美は、教室の引き戸を開ける。