その間隙を縫って、どういったまぐれなのか、彼はルナの前に直接現れた。

真久部 蛮(まくべ ばん)。

超常の力を持つでもない、出自が特殊な訳でもない、ただ銀製の武器と平凡な退治の知識しか持たない、駆け出しのヴァンパイアハンターの少年だった。

真祖どころか、真祖に吸血されて吸血鬼に成り下がった者にさえ勝てるかどうかわからないような未熟者。

無論、ルナの勝利だった。

一蹴したと言ってもいい。

仕置きに、吸血鬼化しない程度に吸血してやる。

血も別段大した事はない。

普通の人間の血だった。