しばらくして。

「……」

長身、黒髪の男が出てくる。

傍らには、艶やかな笑顔の女性も一緒だ。

現夕城流剣術宗主・夕城 真太郎とその妻、紫陽花である。

「沖田君、いらっしゃい」

そう言ってニパッと笑う紫陽花は、まるで少女のような可憐さ。

「ここしばらく大変だったんだってね。古奈美ちんは大丈夫?落ち込んでたりしてない?」

「はい。僕やリュート君達で、勅使河原さんを支えていく所存です」

「きゃー!男らしい発言だねえ、それでこそ騎士(ナイト)様だよねえ、もうお前ら付き合っちゃえよ!」

ばちーん!と沖田の肩を叩いて、1人クネクネする紫陽花。

騎士ではなく侍なのだが…。

「紫陽花、少し控えろ。話が進まん」

呆れたように言う真太郎。

「あ、ごめーん」

『お口にチャック』の動作をして、紫陽花は大人しくする。