勇者と皇女の血族であるシオン・グリフィノーの息子、ティーダ・グリフィノー。

彼は男の子を設けていた…らしい。

皇都民の間で実しやかに囁かれていた噂に過ぎないので、何処まで信憑性のある話なのかは分からないが。

その男の子というのが、地球から嫁いできた『タンポポ』とかいう女性との間に生まれた子であるらしい。

地球出身の妃といえば、リィシンの妃であるノギク、シオンの妃であるリプニーと、この皇都では最早珍しくもない。

問題なのは、このタンポポという妃、地球ではちょっとした曰く付きの血族の娘なのだそうだ。

いや別に、罪人だとか極悪人だとかいう話ではない。

ただ…そう、先祖やタンポポの兄上が身の内に龍を宿している、と。

ただそれだけの話なのだ。

結構な大問題になった。

前述の通り、ドラゴンと呼ばれる幻想種は硬い鱗、一対の頭角を持ち、高熱のブレスを吐く、旅慣れていない冒険者達には脅威であり、熟練した騎士や戦闘職でさえ、時として命を奪われる事があるというのが一般的な認識だ。

そんな魔物を身の内に宿す一族出身の妃など、大丈夫なのか。

今でも少なからず、ティーダの妃がタンポポである事を、よく思わない者はいる。