そうか、そういう事か。

ダンドリッジは椅子から立ち上がる。

「確かに俺は、祖父殿にも勝利したダンピールだ。天神学園のみならず、闇の世界でも太刀打ちできる者のない覇者と言っていいだろう。女は強き者に惹かれる。時に傲慢と映る態度でさえ、実力が伴っていれば魅力的に見えるものだ」

彼は歩を進め、ズイとベルの目前に。

接近しすぎでしょと言いたくなるほどの、ほぼ零距離に近付かれ、思わずベルも一歩下がり、尚且つ仰け反る。

「マスターも女、そう感じるのは仕方ない。ましてや俺は祖父殿と瓜二つの眉目秀麗。惹かれ、慕うのも無理からぬ話」

「えっ、やっ…」

ベルの頬が、熱を帯びてくる。

ダンドリッジの青白い頬も、血色の悪い唇も、隈さえ出来ている切れ長の眼も、館の窓から差し込む月明かりによって妖艶に見える。