そこで真祖はもうひとつの策を巡らせる。

「何の意味もなく橘に養子に出した訳ではない…魔力が必要だった。ツェペリの吸血鬼を満足させるだけの魔力が。量も質も申し分ない魔力がな。近しい所にいたよ。パンドラの箱から生まれし女、その娘がな」

丁度良く、橘 龍一郎とすずの間に生まれた娘、橘 ベル。

ベルを吸血鬼化させないという条件付きで、ヴラドはベルの吸血を許した。

吸血鬼としての本能に従い、ダンドリッジは自制心がきかずにベルの血を吸う。

何も知らぬ者達から見れば、ヴラドはさぞや鬼に見えた事だろう。

養子先の娘の血を吸わせる悪鬼と。

しかし、それもヴラドの策。

パンドラの箱から生まれし娘は、悪魔の子。

吸血鬼と悪魔ならば、当然悪魔の方が格上の存在。

血を吸った所で、悪魔は吸血鬼の眷属とはならぬ。

ならばこの2人の関係性は何か。

「悪魔に傅いた吸血鬼だ。血と魔力を糧に、悪魔の従者となった吸血鬼だ」