罅割れたプールの底。

「やれやれ…また五十嵐工務店に儲けさせてしまうか」

ヴラドは脇腹を押さえて立ち上がる。

折れた肋骨が皮膚を貫通して飛び出してしまっている。

それさえも、既に再生が始まっているが。

「中国拳法まで嗜むとは驚いた。早川 龍娘(はやかわ ロンニャン)の流儀か…あいつは孫の代まで、俺に迷惑をかけてくれる」

舌打ちするヴラド。

正直、感服している。

ここまで肉薄する戦いになるとは思わなかった。

自分は、今も橘 龍一郎の身の内にいる鴉丸 禿鷲襲撃の際の『運命の5分』を守り通したシオン一味の一員。

あの当時よりも魔力を蓄積し、吸血鬼真祖として位が上がったという自負がある。

その俺と、ここまでの戦闘を行えるとは。

自分と同様、ダンドリッジは最早吸血鬼で収まる器ではない。

爵位級悪魔や熾天使に匹敵する力を持っている。