リュートと古奈美は天神学生寮、佐助は兄・雪村の待つ真田家へ。

ベルは夕城邸へと帰宅する。

家に着くと。

「おかえりなさいなの、ベル」

美貌の母が、愛娘を迎えに出る。

橘 すず。

今も龍一郎一味で学園生活を送っていた当時のままの若さを保つ、悪魔の血を持つ女性だ。

「海水浴は楽しかったの?」

「うん、とっても!」

余程楽しかったのか、ベルの声は自然と弾む。

そんな彼女を見て目を細めながら。

「一休みした後でいいから…これ、ダン君になの」

タッパーに入れたおかずを、ベルに見せる。

武家屋敷に住む吸血鬼など言語道断と1人暮らしを始めたダンドリッジの為、すずはいつも食事を準備してくれる。

吸血鬼ならば血を吸うだけでいいのだが、ツェペリ家の者達は、人間としての習慣を守って食事もきちんととるようにしている。

一緒に暮らせば、こんな面倒な事はしなくて済むのだが、どうやらダンドリッジの偏屈な性格は祖父のヴラド譲りのようだ。