汐帆ちゃんの部屋を後にしてから、受付の椅子に座っている1人の警察官の隣に腰を下ろした。





この人は、汐帆ちゃんをここへ連れてきた俺の昔の親友でもある、『今野大和(こんの やまと)』






「なぁ、大和。


一体、何があったんだよ。」







汐帆ちゃんの、病室の前には2人の警察官が立っていた。






「俺にも…詳しいことは分からない。


当事者である、少女にしか分からない。



これは、あくまでも俺の推定だけど…



あの子は、母親を守るために自らの手を殺めてしまった…。」









「それって…まさか…。」







「正当防衛だ。


あの子は、今自分を攻めているのかもしれない。



けど、きっと正当防衛だ。




あの子の母親は酔っ払ってて、意識を失っている状態だから、目を覚まさないと詳しいことは聞けない。



本当の真実はよくは分からない。




けど、これだけは言える。



汐帆ちゃんがしたことは、罪に問われないっていうことだ。





だから、本当は精神科に回したくなかった。



悪いことをしていない汐帆ちゃんを、警察の決まりで精神科に連れて行くなんて…。





罪を犯した人は、怪我をしてたら警察官の連れ添いの元、精神科に回すっていう決まりはおかしいよな…。」







「そもそも、汐帆ちゃんの家庭はどうなっていたんだ?」






「聞き込みからだと、評判はかなり悪かったた。




けど、汐帆ちゃんのことを悪く言う人は誰もいなかった。



むしろ、近隣の人は汐帆ちゃんを褒めていた。



汐帆ちゃんは、心優しい子だって。




『何があったのか、分からないけど、汐帆ちゃんを、守ってほしい。』



近隣の人は、みんなそう口にしていた。」






大和は、そう言葉にしてから拳を握りしめた。





「大和、汐帆ちゃんはどうなるんだ?」






「保護観察がつくか、最悪…逮捕か…。


汐帆ちゃんが詳しいことを話してくれない限りは、なんとも言えないんだ。」






そう言って、大和は項垂れていた。






お前が項垂れてどうするんだよ。






今、辛いのは汐帆ちゃんだろう。





そんな汐帆ちゃんを、助けるのが俺達の指名じゃないのか?



医者として、警察官として。





いや…。





医者としてじゃない。






1人の人間として、俺という1人の人間として汐帆ちゃんを守りたい。







汐帆ちゃんに、人生を踏み外してほしくない。