井上くんといろんな話をした。
進路とか、友達の恋とか、バイトとか。
「華ちゃんは好きな人いないの?」
井上くんはなんの悪気もない顔でそう聞いて来たけど、
あたしには思い出したくない話だった。
黙るあたしを見て、井上くんは少し笑って、
「、、いるんだ、」と言った。
「いいなあ、その人。
華ちゃんみたいな可愛い子に好きになってもらえて。
みんな羨ましがるだろうね」
「、、なんで?
あたしちっとも可愛くないよ。
意地っ張りだしわがままだし、
全然素直になれないし、、」
自分の嫌なところを言い出すと、キリがなかった。
「それが可愛いんだよ」
井上くんは言った。
「そんな大人っぽい顔してるのになんかこどもみたいだし」
「、、こどもじゃだめなの」
「そう?俺は可愛いと思うけど」
あたしはなぜか井上くんとムキになって話していた。
時間はすぐに経って、チャイムが鳴った。
なんか今日は井上くんにたくさん話を聞いてもらった。
少しスッキリした。
「、、ありがと。またサボりたくなったら来る」
「ふふ、じゃあ俺卒業まで毎日待ってる」
ふたりで冗談を言い合って、じゃあね、と手を振ると、井上くんは最後に言った。
「華ちゃんの好きな人がどんなやつか知らないけど、
泣かされたら俺のとこ来ていいから」
そう言って歩いて行った井上くんは、
なんだか去年よりもかっこよく見えた。

