怪我…?

ああ。さっき落ちたことか。

心配してくれてるのだろうか。

だけどきっとこういう心配もただの見せかけ。

心の中ではきっとめんどくさいとか思ってるのだろう。

人間はそんなものだ。期待する方がバカだ。

わたしは冷たくその男を軽蔑すると、ゆっくりとその腕を引き離した。わたしは無意識に彼に触れられた部分をさすった。

やっと心臓が落ち着いた。

ちなみにわたしは怪我をしていないだろう。こんな些細なことで怪我をするほどわたしは弱くない。

まあ、していたとしても、今は急いでいる。それにわたしは痛みを感じないから、血が流れていようが関係ない。

それに向こうが急に飛び出てきたからこんなことになっているわけだだから、心配する時間があるなら早く行かせて欲しい。

それを彼の謝罪として受け取ろうじゃないか。

なのになにさ。あーだこーだ言って、こっちはただでさえ急いでいるところなのに…


はあ…ほんと、めんどくさい。



「本当に大丈夫なんすか?」

「…。」

「あの、ほんとスンマセンした。」男は諦めたかのように言うと頭を下げた。


わたしは何も言わずにその場を去った。冷酷な女とでも思ってればいい。





だってわたしは実際、心なんてもん、とうの昔に捨てているから。