そんな感動的な出来事があったにもかかわらず、東京に戻った私は大学の授業やアルバイトに埋没し、彼女とのことも雑多な暮らしの中で忙殺されてしまった。さらに中退に意識が向けられると教育実習の記憶そのものも奥底に閉じこめ、退学に関わる多くの処理をこなさなければいけなかった。親に相談したら反対されるに決まっていたから、どうやって単独犯で遂行するかなどなど。

しかしその閉じこめられた記憶がまゆみからの電話で一気に蘇ったのだった。

「あんたをお気に入りの女の子がいたでしょ」

「うん、あの子だなって、わかるよ」

「6年生になって受け持ったみーこにもあんたの事、すっごく沢山話してたんだって」

「そっかぁ、俺も思いだしたけど、嬉しいな。なんか懐かしいよ」

「懐かしい?ホントあんたは呑気だね」

「へ?意味わかんね~し」