「そっか、りつこさん、あなたに大学時代の彼の話しをするけど、それは私たちがどんな風に愛し合ってたかって話しだし、彼を愛した私の目から見たひろし君だよ。それでもいいの?」

「いいえ、そうじゃなきゃダメです。それに、わたしが今の彼を語るってことはやっぱりわたしの目からみたひろし君ってことですよ」

「あ、そっか。おんなじか」

すーちゃんがいたずらぽっく微笑みながらコーヒーを飲み干した。

「今日はとっても天気がいいし、なんだかいい日だわ」


りつこも一緒に秋晴れに浮かぶ白い雲を見上げながら穏やかで満ち足りた自分の気持ちに微笑んでいた。りつこは自分がまるでドラマの中のワンシーンにいる錯覚を覚えた。それは茅ヶ崎のサザンな空気に呑まれていたからだろう。そう自覚しながらもその勘違いを満喫していた。